胃潰瘍 穴があいたら手術?

胃潰瘍 穴があいたら手術?

厚生労働省平成26年度調査によると、全国で胃潰瘍はおよそ29.2万人、十二指腸潰瘍がおよそ4.4万人いるとされています。

これらの上部消化管潰瘍は時として穿孔をきたすことがあります。

胃や十二指腸に穴が開いてしまった場合にはどのような状況になるのでしょうか。
また手術が必要になるのでしょうか。

必ず手術が必要か

胃潰瘍(または十二指腸潰瘍)があるのみでいきなり手術となることはありません。
もちろん、潰瘍を作る原因が癌によるものであれば、その治療のため手術が必要になることがあります。

では穿孔してしまった場合どうなるのでしょうか。

答えは消化液の広がりや症状の強さによるというものです。
つまり必ず手術をしなければならないわけではありません。

日本消化器病学会が発行する消化性潰瘍診療ガイドライン2015によると、
血行動態が不安定な(血圧が下がってしまう)場合、腹部所見が限局しない(痛みが全体に広がり強い)場合、70歳以上の高齢者の場合、重篤な併存疾患(もともとの持病)がある場合、胃内容物が大量の場合
に早期に手術を検討するとされています。
逆に以上のものが当てはまらない場合は保存的加療(絶食・点滴・抗生剤など)で慎重に経過を見るというのが行われています。
しかし状況が悪化する可能性があるため、手術をしない場合でも、外科医がしっかりと診察し、手術の要否を常に検討する必要があります。

また、穿孔だけでなく、出血を伴うようなものの場合でも手術を検討する必要があります。

どんな手術をするのか

消化管穿孔の手術の目的は
①開いている穴を閉じる
②広がった汚れを洗い取り除く

というものがあります。

以前は穴の開いている部分を切り取り、つなぎ直すという手術が行われていました。
これは実際に穴が開いている部分以外のところもダメージを受けている可能性があると考えられてきたからです。
しかし、現在では潰瘍を引き起こす原因が調べられ、それ自体の治療が良くなりました。また胃酸を抑える薬が開発されたことにより、周りの組織を良い状態にすることが可能になりました。
そのため、単純な潰瘍による穿孔であれば、穴を縫い閉じて、その上に脂肪の膜で覆うという手術が一般的となりました。

汚れを取り除く治療としては、手術中に大量の生理食塩水で洗浄をします。さらに、ドレーンと言われる管を汚れのたまった部分に置いて、持続的に排液をさせます。
ドレーンについてはhttps://surgeon-s.com/drain/

手術の時間としては60~90分程度が標準的かと思います。
当然、お腹の中の状況がひどければ時間もかかりますし、場合によっては胃や腸を切らなければならないこともあります。
最近では腹腔鏡で行うことも増えてきています。
しかし、これも状況によってできないこともあるため、いまだにその中心は開腹手術となっています。

手術の危険性は

お腹の手術で一般的な危険性があがります。
①出血
単純な穴の閉鎖と被覆だけで済めばほとんど出血しません。
胃や腸を切ることになると少し出血が増えます。
ほとんどの場合不要ですが、必要時には輸血をします。
輸血については https://surgeon-s.com/transfusion/

②感染
胃液は比較的きれいなものです。
しかし、細胞を壊すほどの強い刺激性を持っており、損傷した細胞に感染を引き起こすことがあります。
必要時には抗生剤で治療をしたり、追加で汚れを取り除く治療をしたりします。
抗生物質については https://surgeon-s.com/antibiotics/

③他臓器損傷
もちろん傷つけないよう細心の注意を払っていますが、癒着している(くっついている)などでは、はがす際に損傷してしまうことがあります。
損傷した際には手術中に修復をします。

④癒着に伴う腸閉塞
お腹の手術をおこなうと癒着という現象が起こります。
これにより腸がねじれたり、折れたりしたままくっつき流れが悪くなる方がいます。
内容物が全く通らなくなると腸閉塞という状況になってしまいます。
https://surgeon-s.com/ileus/

この手術特有の危険性はあまりありません。
また、この手術を受ける方は危険性は知っても仕方がないという側面もあります。
というのも、しなければ命の危険性がある時や良くなる見込みのない時にのみ行うからです。

手術後の注意点は

もっとも大切なことは潰瘍自体の治療を行う(続ける)ことです。

胃カメラなどを行い、ピロリ菌の有無を確認したり、胃を荒らす原因となる薬(痛み止めや骨粗しょう症の薬など)を調整することが重要です。
胃酸を抑える薬も忘れずに飲み続けましょう。

アルコールや香辛料などの刺激物、塩分の濃い食事も悪化の原因となるため、なるべく控えましょう。

せっかく手術しても、大元を変えないと繰り返す可能性が非常に高いです。

最後に

ピロリ菌が原因と分かり、最も患者さんの多かった平成5年に比べると4分の1程度に減ってきているそうです。

しかし、ストレスもかかり生活も乱れがちである方も多いかと思います。

手術になる前に病院にかかり適切な治療を受けてください。

お大事に。